こんにちは。株式会社エフカラー代表取締役の田平智子です。
前回では「なぜ今AI研修なのか」をお話ししました。第2回となる今回は、いよいよ「研修の設計図」。始める前に何を整理しておくか、全社員から始めるか部署からか、そして「一度受けて終わり」にしないためのゴール設定について、現場の感覚そのままにお話しします。
研修を始める前に整理すべきことと、目的の決め方
———研修を始める前に社内で整理しておくべきことと、研修の目的の決め方を教えてください。
(田平)まずは、何ができて、何ができないのか。社内にいると、何がぐちゃっとしていて、何が整っているのか、人によって部署によって見え方が違うんですよね。そこを、信頼できる業者さんと相談しながら、研修内容の取捨選択をしていくのがいいと思います。
そのうえで大切なのが、目的の決め方なんですけど。これは、働き方改革を数多く支援してきた越川慎司さんがお話しされていたことなんですけど、優秀なリーダーの口グセは「どんな?」なんだそうですね。「どうやるか」の前に、「どんな状態を目指すのか」を明確にする、と。「散歩していたら富士山に着くことはない」という言葉が、すごく刺さったんです。ゴールが曖昧なままAIを入れても、着きたい場所には着けない。だから私たちは、研修の前に“何のために”を一緒に言葉にすることを、大切にしています。
順番も大事だ、というお話もあって。「ゴール設計 → 施策設計 → データ設計」の順なんですね。逆に、ゴールを決めずに進めて、意味のないデータを分析していた会社さんが本当に多かったそうです。
あともう一つ。「まず小さな初戦の勝利を挙げる」という考え方も参考になるそうですね。ある大手企業さんでは、配信審査の人手部分を60%削減、利用規約レビューを70%削減と、まず一点突破で「これ使えるね」を実感したそうなんです。最初から大きなゴールを掲げるより、“確実に楽になる一箇所”を決める。そこを研修のゴールに置くのが、いちばん無理がないと感じています。

全社員からか、特定の部署からか
———研修対象者は、全社員から始めるべきか、特定の部署から始めるべきか。どちらがよいですか。
(田平)AIが社内インフラになるのは、近い未来で必ず起こります。だから、一番最初の土台のところは、全社員から始めるべきだと思っているんです。
ただ、社員のみなさんでもスキルの差、モチベーションの差、部署としての活かし方の差がある。そこは、それぞれの部署のリーダーに概念の研修から入っていただいて、その方たちが広げていく。つまり「土台は全社で、深掘りは切り口ごとに」という二段構えですね。しかもその切り口は、単純な部署分けだけじゃないんです。スキルの差、モチベーションの差、業務のセキュリティの高さの差。リーダーなのか一般なのか、経営層なのか。いろんな切り口で考えるべきだと思っているんですよ。
進め方としては、いきなり全社じゃなくて「特定の部署でまず試す(サンドボックス)」というやり方がいい、という声もあるそうです。例えば営業が複数あるなら、まず一つで試して「うまくいくし、安全だね」と分かってから全社に広げる。あるAI研修の事例では、研修中に各部署から「コアリーダー」を選んで、終わった後に推進チームが揃った状態まで持っていく、というお話もありました。前提として、社長・トップが本気で関わることも欠かせません。
「1回の研修で全部を達成しよう」とされる方が、本当に多いんです。でも、筋肉は1か月でムキムキにはならないですよね。段階を踏んで、一緒に育てていくもの。そう考えると、ぐっと気が楽になると思います。
「一度受けて終わり」になる会社と、定着のゴール設定
———研修が「一度受けて終わり」になってしまう企業の共通点と、定着させるためのゴール設定を教えてください。
(田平)やったつもりになってしまう、というのが一つ。そして、AIの流れやスピードの速さを、実感として持っていないというのも大きいですね。私たちはWeb制作の会社なので、変化の速さには慣れているつもりでした。でも、AIは本当に2週間おきくらいに大きく変わります。今までの“1年で1回”の感覚とは、まるで違うんですよ。だから、一度受けて終われるはずがない。応用ができて、業務に落とし込めて、初めて成果が上がる。最新の情報を何度も入れ込むメリットは、本当に大きいんです。
では、定着させるためのゴール設定とは何か。私が一番大事だと思っているのは、無理しすぎないこと。嫌になっちゃうと、続かないんですよ。特に今は黎明期で、反対勢力のような方がいたときに、いかに柔らかく受け入れてもらえるか。ノウハウや使い方よりも先に、“なんだか難しそう、自分の仕事が大きく変わるのが嫌だ”という障壁のほうが、ずっと大きいと感じています。だからゴール設定というより、まず最初に、いかにワクワクしながら使ってみようと思えるか。その設定こそが大事なのかな、と思っています。
これ、社外の知見とも見事に重なるんですよ。組織には必ず「262の法則」がある、というお話があって。放っておいても使うトップ2割、何を言っても動かない下2割、そして様子見の真ん中6割。経営者の方って、つい目立つ上下の2割に目が行くんですよね。でも、いちばん動かしたいのは、真ん中の6割。ここが動くと、空気でほかの層まで一緒に動き出す。ゴールを「全員一斉」ではなく、「6割の中間層をどう前向きに変えるか」に置くと、定着がまるで変わると感じています。
そして、定着を「ノリ」で終わらせないために、週次の利用率(WAU)をKPIに置くといい、という考え方もあるそうです。社員のうち毎週何割が使ったか。最低でも45%、60%を超えたらかなり良い、80%でトップクラス。「受講した人数」ではなく「毎週使っている率」にゴールを置き換える。これは中小企業さんでも、そのまま使える物差しだと思います。
———ありがとうございました。次回(第3回)は、いよいよ実践編です。それぞれの会社に合わせた研修や、実務に効く研修題材、苦手な方の巻き込み方などを詳しく伺っていきます。

よくあるご質問(FAQ)
Q. AI研修の目的は、どう設定すればいいですか?
「どうやるか」より先に「どんな状態を目指すか」を言葉にし、ゴール→施策→データの順で考えるのがおすすめです。まずは「確実に楽になる一箇所」を最初のゴールに置くと、無理なく進みます。
Q. 全社員からと特定部署から、どちらで始めるべきですか?
土台となる基礎は全社員で、深掘りは部署やレベルごとに、という二段構えがおすすめです。まず一つの部署で小さく成功させ、コアリーダーを育ててから広げると、結果的に早く定着します。
Q. 研修が一度きりで終わってしまいます。どう防げばいいですか?
定着のゴールを「受講した人数」ではなく「毎週使っている率(週次利用率)」に置き換えるのが有効です。様子見の中間6割をどう前向きに変えるか、を目標にすると、空気ごと変わっていきます。
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第1回:中小企業のAI研修、なぜ今か / 第3回:実務に効かせる研修と、苦手な人の巻き込み方
AIO時代の検索とサイトのあり方 第1弾 / 第2弾
📎 参考・引用元
本記事で田平が触れた社外の知見の一次情報です。「こういう考え方・こういう根拠」は、以下の発信者の方々の発信に基づいています。
・優秀なリーダーの口グセは「どんな?」/ゴール設計→施策設計→データ設計の順 ── 働き方改革を数多く支援してきた越川 慎司さん(クロスリバー代表)|トップ0.5%企業の差がつくAIの使い方
・「まず小さな初戦の勝利を挙げる」/配信審査60%減・規約レビュー70%減 ── 南場 智子さん(DeNA会長)|これからの「人と組織とAI」のあり方
・「262の法則」(中間6割を動かす)/週次利用率(WAU)をKPIに ── AI導入を数多く支援してきた梶谷 健人さん(POSTS代表)|生成AI時代の事業・組織づくり(北風より太陽)・サンドボックス導入はAIを導入しない企業はオワコン
・研修中に各部署からコアリーダーを選出 ── 300社以上のDX・AI研修を支援する矢嶋 拓弥さん|AI研修が失敗する理由と成功する研修の違い
プロフィール|田平 智子(たびら さとこ)
株式会社エフカラー 代表取締役。Webプロデューサーとして15年以上にわたり中小企業のWeb戦略・コンテンツマーケティングを支援。「関わる方全てに、実り多く彩り豊かな変化をもたらす」を理念に、女性クリエイターのみで構成されたエフカラーを率いる。顧客リピート・紹介率95%。SEO・AIO対策・AI活用支援・AI研修を一貫して提供している。


